ニューヨーク市で10月1日以降に始まる家賃安定化(rent stabilization)住戸の更新契約は、ガイドライン上の値上げ率が0%となりました。家賃ガイドライン委員会(Rent Guidelines Board)の命令第58号(Order #58)は、2026年10月1日から2027年9月30日までに始まる1年契約と2年契約の更新をいずれも凍結するもので、対象は約100万戸の安定化住戸に及びます。同委員会が2年契約を凍結するのは今回が初めてです。家主による訴訟が係属中のまま施行され、10月1日には市庁(City Hall)と委員との間のメッセージが裁判記録に加わりました(The Real Deal、NY1)。
The Real Dealはこの施行を「混乱」と評しました。マンハッタンの購入者にとって重要なのは、凍結がどの住戸と建物に及ぶのか、そして購入の採算をどこで変えるのかという点です。
初めて購入を検討される方は、まずニューヨーク市でのアパートメント購入ガイドをご覧ください。
本稿は公開されている規則と報道をまとめたものであり、法的助言ではありません。入居者付きの物件を購入する際は、必ず不動産専門の弁護士に確認を依頼してください。
要点
- 委員会は2026年6月25日、7対1で1年更新0%、2年更新0%を可決しました。2015年、2016年、2020年の過去の凍結は、いずれも1年契約のみが対象でした。
- 凍結の対象は家賃安定化住戸のみです。市場賃料の賃貸物件や、ほとんどのコンドミニアムおよびコープの住戸は対象外です。
- Randy Mastro氏が代理する家主らは7月、手続きが結論ありきだったとして提訴しました。Brendan Lantry判事は市庁に対し委員会とのやり取りの提出を命じ、凍結の執行停止は認めず、年内に判断を示す見通しです。
- 家主側が勝訴した場合、すでに0%で締結された契約がどうなるかについて、弁護士の見解は分かれています。
- 家賃安定化住戸を含むタウンハウスや小規模建物の購入者にとって、今回の凍結は、空室時の規制解除(vacancy decontrol)を廃止し、改修による賃料上乗せに上限を設けた2019年の規則にさらに重なる形となります。
委員会の決定
「2026年10月1日以降、2027年9月30日以前に開始する」1年契約または2年契約について、0%。採決は7対1でした。委員9名のうち6名は、凍結を公約に掲げて選挙戦を戦ったZohran Mamdani市長が任命した委員です。前市政下で任命された所有者側委員のChristina Smyth氏は、採決の数時間前に辞任しています(WSET、CityRealty)。
委員会が家賃を凍結したのは初めてではありません。2015年と2016年、さらに2020年にも1年契約を0%としました。いずれの回も、2年契約には一定の引き上げが認められていました(City Limits、CityRealty)。今回は両方の契約期間が凍結されたため、今年2年更新に署名した入居者は、2029年後半まで同じ賃料を維持できる可能性があります。
所有者側はコストの上昇を指摘します。委員会自身が4月に公表した2026年運営コスト価格指数(Price Index of Operating Costs)では、安定化建物のコストが5.3%上昇し、うち保険料は10.5%、燃料費は11.0%上昇しました。一方、委員会が別途実施した収支調査では、純営業収益(NOI)は平均でなお増加しており、区(borough)ごとの差が大きいことが示されています。
訴訟とその意味
ブルックリン、クイーンズ、スタテンアイランド、ブロンクスの安定化建物を所有するグループは7月、州最高裁判所(State Supreme Court、ニューヨーク州の第一審裁判所)にArticle 78(行政判断の司法審査)に基づく申立てを行いました。代理人であるDechertのRandy Mastro氏とRosenberg & Estisは、委員会が「凍結を実現する方向にあらかじめ傾いていた」うえ、自らのデータを無視したと主張しています(Commercial Observer、6sqft)。
Brendan T. Lantry判事は9月初旬以降、複数の判断を示しています。市に対しては、1月1日から6月の採決までの市庁と委員との書面でのやり取りを提出するよう命じました。2025年の引き上げ率(1年契約3%、2年契約4.5%)を引き続き適用するよう求めた家主側の申立ては、裁判所にその権限がないとして退け、10月1日より前に判断を示すことも見送りました。「本件の解決に向けて、可能な限り迅速に取り組んでいる。だが、頭に散弾銃を突きつけられた状態で仕事をするつもりはない」。判断は年内に示される見通しです(THE CITY、2026年9月24日)。
10月1日には約3,000ページの文書が公開されました。The Real Dealはその大半を事務的な内容と伝えています。Mastro氏は市長室と委員会の連携を示すものだと述べ、市の法務責任者であるCorporation CounselのSteven Banks氏は、委員会の独立性を示すものだと述べています。
残る論点は、家主側が勝訴した場合、すでに更新された契約がどうなるかです。THE CITYによれば、Mastro氏自身はこう述べています。「ゼロ・ゼロが維持されれば、家主はそれに縛られることになる」。The Real Dealが取材した別の家主側弁護士らは、裁判所が引き上げを命じれば遡及適用されると見ています。現時点では誰にも分からず、上訴があれば2027年までもつれ込む可能性があります。
凍結の対象となる住戸、ならない住戸
家賃安定化が適用されるかどうかは、建物、その築年、そして税制上の経緯によって決まります。Rent Guidelines Boardによれば、一般に次が対象となります。
- 1947年2月1日から1973年12月31日までに建てられた6戸以上の建物。
- 1947年以前に建てられた6戸以上の建物のうち、入居者が1971年6月30日より後に入居した住戸。
- 1974年以降に新築または大規模改修された3戸以上の建物で、421-aやJ-51(いずれも固定資産税の減免制度)などの税優遇を受けたもの。適用は優遇措置が求める期間に限られます。これらの制度の仕組みは、421-aとJ-51の減税制度ガイドで解説しています。
対象外となるのは、市場賃料の賃貸物件と、ほとんどのコンドミニアムおよびコープの住戸です。一部の市場賃料住戸は、不当な値上げや更新拒否を制限する2024年の州法Good Cause Eviction(正当事由に基づく退去規制)の適用を受けますが、これは委員会のガイドラインとは別の制度です。建物がコンドミニアムやコープに転換された場合も、居住中の安定化入居者は保護を維持します。その入居者が退去すれば、住戸は家賃安定化の対象外として売却または賃貸できます(RGB)。家賃統制(rent control)は、古い建物の長期入居者を対象とする、はるかに小規模な別制度で、独自の算定式で運用されています。
マンハッタンで購入する場合の意味
- 賃貸目的でコンドミニアムを購入する場合。 マンハッタンの一般的なコンドミニアム住戸を市場賃料で貸す場合、影響はありません。入居者付きの住戸であれば賃貸借契約書を求め、安定化住戸として登録されているかどうかを書面で確認してください。421-aの適用を受けた建物の住戸は、安定化住戸である可能性があります。
- コープを購入する場合。 古いコープの中には、転換時からの安定化入居者が住む、スポンサー(転換時の売主)保有の住戸が今も残っているところがあります。それらの賃料も今回凍結されました。該当する住戸がいくつ残っているかを確認し、その収入を念頭に置いて財務諸表を読んでください。何を請求すべきかはコープとコンドミニアムの比較ガイドで解説しています。
- 入居者付きのタウンハウスを購入する場合。 1974年以前に建てられた6戸未満の住宅は、税優遇を受けていない限り、一般に家賃安定化の対象外です。6戸以上であれば、通常は対象となります。署名する前に、売主の要約ではなく、DHCR(ニューヨーク州住宅・コミュニティ再生局)の賃料登録履歴を入手してください。その他の確認事項はブラウンストーン購入チェックリストにまとめています。
- 小規模建物の収支を精査する場合。 2019年以降、空室時の規制解除はなくなり、市内では大規模改修(MCI)による賃料引き上げは年2%が上限です。2024年の予算改正以降、所有者が賃料を通じて回収できる住戸改修(IAI)の費用は、原則として15年間で1戸あたり3万ドル、長期空室の一部住戸では5万ドルが上限です(HCR)。2027年9月30日までに始まる各更新には0%のガイドラインを、その後は将来のガイドラインを、そして実際のコスト上昇を織り込んでモデル化してください。仲介業者は7月、この採決によって安定化建物の価値が下がったとThe Real Dealに語っています。
- 裁判の行方を注視する場合。 判断は年内に示される見通しです。いま締結する契約では、どちらの結果になってもリスクを配分しておくべきであり、その条項は弁護士に起草を依頼してください。
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よくある質問
2026年、ニューヨーク市で家賃凍結は実施されていますか?
はい。Rent Guidelines BoardのOrder #58は、2026年10月1日から2027年9月30日までに始まる家賃安定化住戸の1年更新と2年更新を0%と定めています。市場賃料の住戸には適用されません。
ニューヨーク市の家賃凍結はコンドミニアムにも適用されますか?
一般には適用されません。市場賃料で貸されているコンドミニアムやコープの住戸は、家賃安定化の対象外です。例外は、建物の転換時にその住戸に住んでいて保護を維持している安定化入居者と、税優遇の条件として家賃安定化が求められる建物内の住戸です。
家賃凍結の対象となる住戸はどのくらいありますか?
Rent Guidelines Boardによれば、市全体で約100万戸の家賃安定化住戸が対象です。
家賃凍結が覆される可能性はありますか?
家主側は州の裁判所に命令の取り消しを求めています。Brendan Lantry判事は市庁と委員会とのやり取りの提出を命じ、凍結の執行停止は認めず、2026年末までに判断を示す見通しです。命令が取り消された場合、その後の扱いは裁判所の判決によって決まり、すでに締結された契約への影響については弁護士の見解が分かれています。
2026年の凍結はニューヨーク市史上初めてですか?
いいえ。委員会は2015年、2016年、2020年に1年契約を凍結しています。2年契約まで凍結したのは2026年が初めてです。
建物に価格をつける前に、賃料登録履歴を入手してください。
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出典:NYC Rent Guidelines Board, Apartment and Loft Order #58および家賃安定化・家賃統制に関するFAQ、RGB 2026 Price Index of Operating Costs、The Real Deal(2026年7月10日、7月22日、10月1日)、NY1(2026年10月1日)、THE CITY(2026年9月24日)、Commercial Observer(2026年7月22日)、6sqft、WSET、CityRealty(2026年7月10日)、City Limits、Spectrum News(2026年9月17日)、NY Daily News(2026年10月1日)、2019年HSTPA(住宅安定・借家人保護法)および2024年IAI改正に関するNYS Homes and Community Renewalの資料、N.Y. Real Property Law section 216(Good Cause Eviction)。